注目の市場調査 「ナンバーワン立証・検証調査」(No.3)

2017年1月18日

前回のコラムではナンバーワン広告において留意すべきポイントの一つとして、客観的なデータに基づきナンバーワン表記を行うことの重要性を論じ、それらデータを得るために、時には新規に調査を実施する必要性があることを述べた。

ナンバーワン広告を実施するための根拠となるデータ取得を目的とした調査を弊社は「ナンバーワン立証・検証調査」と呼び、これまでに弊社は多くの企業のナンバーワンの立証・検証を支援してきた。

それらナンバーワン立証・検証調査の実施により培ってきたノウハウを基に、今回は本コラムの最終回として、ナンバーワン立証・検証調査の考え方をテーマに論じる。

 

 

1. ナンバーワン調査の考え方について

 

さて、「ナンバーワン立証・検証調査の考え方」を今回のテーマとして論じると述べたばかりであるが、実際の調査における調査方法・手法や調査そのものの規模感は様々で、画一的に「こう考えればよろしい」というものはない。

どのようなナンバーワンを標榜したいのか、によって採用すべき調査方法・手法は異なり、また調査の費用や期間に直結する調査規模もまちまちである。

そこで本コラムでは、ナンバーワン立証・検証調査を実施するにあたって予め考えておくべきポイントに焦点を当てることとする。

先に答えを言ってしまうと、予め考えておくべきポイントは、「どのようなカテゴリーで、どのような指標でもって、誰と比較して、ナンバーワンと言いたいのか」である。これらを明確にすることが調査実施のための第一歩となる。

 

1) 競争カテゴリーの設定

まずは、「どのようなカテゴリーでナンバーワンと言いたいのか」である。つまりナンバーワンの座を他社と競う際の競争カテゴリーを何に設定するのかということである。

多くの場合、設定される競争カテゴリーは、ナンバーワンであることを標榜したい製品やサービスのカテゴリーに一致する。

例えば、「美容液の売上ナンバーワン」を標榜するのであれば、競争カテゴリーは「美容液」となり、「旅行代理店の取扱ツアー数ナンバーワン」であれば、「旅行代理店」となる。

ここでは例として「美容液」や「旅行代理店」と、業界全体を競争カテゴリーとしたが、多くの場合、各業界には大手企業が存在しており、業界全体でのナンバーワンの座を勝ち得ることは容易ではない。

そこで競争カテゴリーの設定においては一工夫が必要となる。

1990年代に発刊された「売れるもマーケ 当たるもマーケ-マーケティング22の法則」(アルライズ(著)、ジャックトラウト(著)、東急エージェンシー出版部)という書籍があり、この書籍ではタイトルのとおりマーケティングで成功するための法則として22のポイントを掲げている。

その中で第2の法則に「あるカテゴリーで一番手になれない場合には、一番手になれる新しいカテゴリーを作れ」と述べられている。

この考え方は、ナンバーワン立証・検証調査における競争カテゴリーの設定においても同様と言える。

もし業界全体で一番手になれなくても、新しいカテゴリーを見出すことでナンバーワンになることはできる。つまり既存の市場を細かく切り込むことで自社が一番手になることができる。

 

例えば、上記の美容液の例で同市場には業界最大手企業が存在しており、調査をするまでもなくナンバーワンになることは難しいとする。

その場合は、競争カテゴリーを、例えば「生薬を配合した美容液」にし、一つ切り込まれた市場カテゴリーにおいてナンバーワンとなれる可能性を探ることができる。

実際に、このように市場を細かく切り込んだナンバーワン表記は多く、例えばビール業界においては「ビール売上ナンバーワン」の他に「発泡酒売上ナンバーワン」、「第三のビール売上ナンバーワン」など複数の売上ナンバーワンが存在している。

 

上記のとおり競争カテゴリーの設定において市場を細かく切り込んでナンバーワンになれるカテゴリーを創造することは有効であるが、ナンバーワンになるためにであっても、あまりに市場を細かく切り込みすぎないほうが良い。

市場を細かく切り込めば切り込むほど、競争相手は少なくなり、ナンバーワンの座を得ることも容易になるのは確かだが、次のナンバーワン表記の例を読んでいただければなぜ細かすぎる切り込みを避けるべきかを感じていただけるだろう。

 

(ナンバーワン表記例)

「医薬部外品で生薬が配合されたエイジングケア用美容液売上ナンバーワン」

 

もはや何のカテゴリーでナンバーワンなのかがわかりにくく、何より「美容液売上ナンバーワン」の前段が長すぎて納得感が低いナンバーワンであるように感じるのは筆者だけではないだろう。

 

2) 評価軸の設定

競争カテゴリーの設定が完了したら、次に「評価軸の設定」を行うこととなる。

先ほどの例で「美容液売上ナンバーワン」であれば、評価軸は「売上」となり、「旅行代理店の取扱ツアー数ナンバーワン」の場合は「取扱ツアー数」が評価軸となる。

他にも、満足度、利用率、販売数量、販売価格、商品の効果・性能、(入学試験や免許などの)合格率、など様々な評価軸が存在するが、これらの評価軸を設定する際のポイントとして、定義がしっかりした数値で測定できる評価軸とすることが望ましい。

逆の良い方をすれば、定義づけられない数値を評価軸に用いるのは避けたほうが良い。

 

ひとつ事例をご紹介しよう。

 

とある設備機器メーカーが「弊社のサービスラインナップは業界一である」と自負しており、これをベースにナンバーワン広告の実施を検討していた。

実際に調査を実施したところ、「定期メンテナンスの実施」「延長保証契約の有無」「24時間遠隔監視サービス」を全て提供しているメーカーは同社のみであるという結果が得られ、この調査結果に基づき「サービス充実度ナンバーワン」をキャッチフレーズとした広告訴求を行った。

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ところが後日、競合他社より以下の調査結果を提示され、同社のナンバーワンは覆されることとなった。

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自社では実施していない「無料部品交換」や「毎月使用量のフィードバック」というサービスを含めると、他社が充実度でナンバーワンになってしまったのである。

 

この事例の問題点は、定義づけしにくい「サービスの充実度」をナンバーワンの根拠としたことである。

人によって解釈が異なったり、範囲の捉え方が異なったりする評価軸は、ナンバーワンの根拠となるデータとしてリスクが高いと言えよう。

 

3) 調査対象の設定

競争カテゴリー、評価軸の設定に続いて、「誰と比較してナンバーワンと言いたいのか」を検討し、調査対象を設定する。つまり競争相手の明確化であり、多くの場合はこの競争相手が調査対象となる。

 

自社がナンバーワンであることを明確にするには、競争相手の実績が自社よりも劣ることを証明しなければならず、そのために競争相手を調査対象に設定するケースが多い。

(競争相手以外の第3者を調査対象に設定して、競争相手の実績を把握する調査手法もあるため、必ずしも競争相手=調査対象とはならない)

調査対象が設定されたら、それら調査対象の企業(あるいは機関、団体など)をリストアップする。

 

オーソドックスな調査対象のリストアップ方法として以下3つが挙げられる。

 

A) 既存のレポートから企業リストを入手

B) 業界団体から会員リストを入手

C) 行政から登録事業者リストを入手

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これらの他にも様々な調査対象のリストアップ手段があるが、いずれの手段で入手ないし作成された調査対象リストについても、その網羅性には留意が必要である。

網羅性の低い調査対象リストに基づき調査をした結果、調査対象から漏れていた競争相手が実はナンバーワンであった、という事態を防ぐためである。

理想的には設定した競争カテゴリーに属している事業者の全てを網羅したリストであることが望ましいが、最終的な落としどころは「合理的根拠に基づく妥当性の高い調査対象抽出」がなされたリストを入手・作成し、それに基づき調査を推進することとなるだろう。

 

 

2. おわりに

 

全3回に渡り、「注目の市場調査:ナンバーワン立証・検証調査」と題してナンバーワン表示・広告についての解説、ナンバーワン広告における留意事項、ナンバーワン調査の考え方について論じてきた。

昨今の流れとして、広告表示全般に対する規制は強まっており、ナンバーワン広告においてもその例に漏れず、2016年4月には優良誤認表示や有利誤認表示を対象に課徴金制度が導入された。

こうした流れの中で、ナンバーワン広告を検討されている事業者が思わぬ落とし穴により憂き目を見ることを少しでも減らせればという想いから、今回コラムを執筆させていただくことになった次第である。

 

少しでも多くの事業者様のお役に立てる情報が提供できていれば幸いである。

  

  

 

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