注目の市場調査 「ナンバーワン立証・検証調査」(No.2)

2016年12月20日

前回、ナンバーワン広告のトレンドや効果について論じたが、今回はナンバーワン広告を行う上で留意すべきポイントに着目して論じることとする。

 

 

1. ナンバーワン広告に係る規制について

 

ナンバーワン広告とは言うまでもなく広告の一類である。したがってナンバーワン広告での表現については「景表法」に基づかなければならない。

「景表法」とは、その正式名称を「不当景品類及び不当表示防止法」といい、簡単に言えば「誤解を与えるような表示をしている商品やサービスから消費者を守る法律」である。

 

「景表法」の第四条では以下のような3つの広告表示を禁止している。 

1) 優良誤認表示(実際より品質が競合に比べて著しく優良であると誤認させる表示)

2) 有利誤認表示(実際より価格が競合に比べて著しく得であると誤認させる表示)

3) その他誤認されるおそれのある表示

 

上記はいずれも「嘘や誇張された表現を用いて消費者に商品やサービスを購入させるよう仕向けてはならない」ということを意図したものである。

これらをナンバーワン広告に当てはめて考えたとき、当然ながら実際にナンバーワンではないのにも関わらず、ナンバーワンであると偽ることは広告表現として問題であり、そのような広告の事業主は「景表法」に基づき罰せられる対象となる。

 

では、自社の商品・サービスが「確固たる自信」を持ってナンバーワンであると認識できている場合は、「景表法」に抵触することなく広告表示が可能となるのであろうか?

その答えは、「確固たる自信」が何に基づくかによってYESともNOともなりうる。

 

前回のコラムで取り上げた公正取引委員会による「No.1表示に関する実態調査」においては、ナンバーワン表示が「景表法」に抵触した不当表示とならないためには以下の2点両方を満たす必要がある、としている。

1) 客観的な調査に基づいたデータを使用していること

2) 調査結果を正確かつ適切に引用していること

 

つまり、事業主がどれだけ「確固たる自信」を有していたとしても、客観的なデータなく自社の商品・サービスがナンバーワンであると自負しているだけではナンバーワン広告は行えない。

すなわちナンバーワン広告を行う上での「確固たる自信」とは、客観的な調査から得られるデータに基づいたものでなければならない。

 

 

2. 客観的な調査の要件

 

では、「客観的な調査」といえるためには、どのような要件が満たされるべきか。

「景表法」では下記の2点を要件として規定している。

1) 当該調査が関連する学術界又は産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法によって実施されていること

2) 社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法で実施されていること

 

例えば、「製品Aの顧客満足度ナンバーワン」を検証・立証することを目的に実施された調査において、下図のような調査結果が得られたとしよう。

 

 No1コラム2回目図1-2.jpg

 

調査結果では製品Aがダントツの1位であった。

しかし、この調査における調査対象者が製品Aのユーザーに限定されているとしたら、この調査結果をエビデンスにナンバーワン広告を行うことはできない。

何故ならば、調査対象者の属性の偏りによって製品Aの満足度が高くなることは当然予想されることであり、公平な調査とは言えないからである。

同様に自社の社員や関係者を対象とするなど、調査対象者を自社に有利になるように選定した場合にも、「一般的に認められた調査」、「妥当性の高い調査」とは言えない。

 

では、先ほどの調査において調査対象者が無作為に抽出されており、その点で自社に有利に働くバイアス(偏り)が掛かっていないとする。

但し、調査対象者数が僅か10人(サンプル)であったとする。

 

残念ながら、この場合もこの調査結果はナンバーワン広告のエビデンスとしては不適当となるだろう。

調査の客観性を保つためには、調査対象者数を統計的に十分確保しなくてはならないからである。

 

10人へのアンケートの場合、専門的な言い方をすれば「測定誤差が大きすぎるため調査結果として有意でない」ということになる。

 

回答者1人が持つ調査結果への影響度(重み)が10%もあるため、改めて別の10名に対してアンケートを実施した場合に同様の結果が得られる可能性が極端に低い、ということである。

(何サンプル確保すれば統計的に信頼に足るか、という点については、1つのテーマとしてコラムが書けるほどの話になるため、今回は割愛させていただく。)

 

次の例として、調査対象者が無作為に抽出されており、調査対象者数も統計的に十分であったとする。

但し、調査設計において自社に有利になるような設問設定がされていたならば、当然ながら不適当となる。

 

 N01コラム2回目図2.jpg

 

(ここまで極端で判りやすい設問はなかなかお目に掛かる事はないが)この設問においては対象者の回答を誘導する文言があり、調査方法において公平性を欠いていると判断される。

 

例示的に、一般的に認められていない調査、妥当でない調査となる要件を述べたが、これらはあくまで例であり限定されるものではない。

ナンバーワン広告のエビデンスとなる調査として大切なことは「一般的に認められた、妥当性の高い調査方法」が採用されているか、ということである。

 

 

3. 調査結果の正確かつ適切な引用の要件

 

不適切なナンバーワン広告とならないためには、上述のとおり、一般的に認められた、妥当性の高い調査方法であることに加え「調査結果を正確かつ適切に引用」する必要がある。

 

「景表法」では、調査結果の正確かつ適切な引用について、以下の3点を要件として規定している。

1) 「商品の範囲」を明確にすること

2) 「調査期間、時点」を明確にすること

3) 出典を正しく表示すること

 

例えば、次のようなナンバーワン広告があったとしよう。

 

 N01コラム2回目図3.jpg

 

まず「商品の範囲の明確化」であるが、例示の広告では「美容液3年連続売上実績No.1!」と表示し、注釈で「▲▲成分配合美容液売上実績No.1」と追加説明を行っている。

もし、この追加説明があっても、消費者が「▲▲成分配合美容液」という商品範囲を理解できず、美容液と称する商品全般において売上実績がナンバーワンであると認識する恐れがある場合は「景表法」に抵触する恐れがあると言える。

 

次に「調査期間、時点の明確化」については、例示の広告において明記されておらず、この広告を見た消費者はいつ時点の調査結果に基づきナンバーワンと訴求されているのか認識ができない。また「3年連続」と表記されるが、いつからいつまでの3年間かは不明瞭である。

 

最後に「出典の正しい表示」について、例示の広告では、「弊社調べ」となっているが、公正取引委員会の見解としては、調査会社が行った調査結果に基づきナンバーワン表示を行う場合には、出典として調査会社名および調査の名称を表示することが望ましい、とされている。

上記の「調査期間、時点の明確化」と合わせて考えると、例示の広告が調査会社等の調査結果をエビデンスとしている場合は、「株式会社日本能率協会総合研究所「美容液マーケット調査」(2016年10月~12月実施)による」などの記載が望ましい。

 

 

4. おわりに

 

今回、ナンバーワン広告を行う上での留意すべき法規制として「景表法」を取り上げたが、「景表法」は2016年4月1日に改正され、優良誤認表示や有利誤認表示を対象に課徴金制度が導入されることになった。

すなわち、違反者には罰金という金銭的なペナルティが与えられるが、加えて違反したという事実は消費者庁のウェブサイトで公表される。

つまり、「景表法」への抵触は、金銭的負担のみならず、ブランドや企業としての信頼や評価を大きく損なうこととなりかねない。

この観点からも、今回のコラムで論じたポイントは、ナンバーワン広告によるマーケティングを検討される際に、十分留意していただきたい内容である。

 

今回のコラムでは、ナンバーワン広告を行うには客観的な調査を行い、また得られた調査結果を正しく引用することが重要だと論じた。

ナンバーワンを証明するデータが文献調査(オープンデータ)等で得られる場合はそれを活用すれば良いが、既存の文献等でデータが存在しない場合には、新たに調査を実施することになる。

そうしたナンバーワン広告を実施するための根拠となるデータを得ることを目的とした調査を弊社では総称して「ナンバーワン調査」と呼び、毎年多くの顧客企業より委託を請け、様々な商品やサービスのナンバーワン立証・検証を支援している。

 

日本能率協会総合研究所の「ナンバーワン検証・立証調査」はこちらをご覧ください。

 

「ナンバーワン立証・検証調査」を通じて培ったノウハウを基に、次回のコラムは本テーマの最終回として、ナンバーワン立証・検証調査の考え方について論じる予定である。

 

 

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